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東京・御茶ノ水の写真専門ギャラリー、gallery bauhaus(ギャラリー・バウハウス)のスタッフによるブログです。
ロバート・フランク写真展「MEMORY ―ロバート・フランクと元村和彦―」終了いたしました
本日をもちまして、ロバート・フランク写真展「MEMORY ―ロバート・フランクと元村和彦―」は
終了いたしました。たくさんのご来場ありがとうございました。

次回は、4月22日(水)から、岡崎正人写真展「Northern Light 光に出遭う旅」を開催いたします。



極寒の北海道へ長期間通い続け、制作した作品群を一挙に展示する写真展です。
銀塩写真でなければ表現できない、時に力強く、時に繊細な光と影を4×5インチの大型カメラで撮影。
岡崎は厳冬の大自然を相手に過酷な旅と撮影を繰り返しながら、自らの写真を「感情を排除し、
言葉では説明できないものだけが残る」と語ります。

作家自身の手によるファイン・プリント(ゼラチン・シルバー・プリント)約30点を展示いたします。

詳細はこちら
http://www.gallery-bauhaus.com/150422_okazaki.html
 
posted by gallery bauhaus | 19:00 | ロバート・フランク写真展 | - | - |
倉石信乃さんによる寄稿文
ロバート・フランク写真展「MEMORY ―ロバート・フランクと元村和彦―」のために、
1995年に横浜美術館で開催されたロバート・フランク写真展「Moving Out」担当学芸員で、
現在は明治大学の教授をされている倉石信乃さんが文章を書いてくださいました。

4月11日(土)には、倉石さんにロバート・フランクについてトークをしていただくイベントも
開催予定でございます。

ぜひ、ご一読ください。



コレスポンデンス―元村和彦コレクションによるロバート・フランクの写真


   近年、ギャラリー・バウハウスで連続して展示されている、元村和彦コレクションによる
ロバート・フランクの写真は、形成期から近年に至る代表作から比較的珍しい作例まで、さま
ざまな様相を示しています。われわれは単に写真家と出版人の関係を超えて長年にわたって形
作られたこの奇蹟的な友情の歴史から、ロバート・フランクという写真家の類い稀な作家精神
を具体的に知ることができるでしょう。

  ロバート・フランク作品の重要な特徴の一つは、作品の自伝性というべきものと考えていい
と思います。今回の展示もフランクが自らの人生と写真とを重ね合わせて考えてきた、その軌
跡のいくばくをたどることができます。作品の自伝性が、格別に作家自身に意識され、それが
明確に表現されるようになったのは、まさに元村さんが1972年、フランクの写真集『私の手の
詩』を自身の邑元舎から出版して以来のことです。展示作品からも明らかなことですが、『私
の手の詩』には、余りにもモニュメンタルな達成と見なされるようになった『アメリカ人』
(1958年初版)への集中的な関心を拡散させ、1940年代末から50年代初頭にかけての初期作品や、
『アメリカ人』以後の仕事をも含めて、自身のキャリア全体を再編集したいという、フランク
の強い意欲が見て取れます。邑元舎からの2冊目のフランクの写真集『花は...』(1987年)にも、
こうした自伝的な語りはもちろん継承されています。

  『
花は...』は三つの章から形成される写真集で、1950年代初頭のパリ、『アメリカ人』に
まとまる1955年の旅の途上で記録された自動車工場のあるデトロイト、そして1970年からニュ
ーヨークとは別に住むようになったノヴァスコシアのマブーが、綴られています。デトロイトの
自動車工場のシーンは『アメリカ人』にも含まれていますが、フランクは『私の手の詩』以降、
繰り返しこの時の撮影を取り上げて増補・拡充しています。来し方と行く末をそれぞれ確かに望
むための、現在のパースペクティヴをその都度手探りで設定し直していこうと腐心するフランク
の写真は、いつも「編集」という作業の自発性が息づいています。

  よく知られているように、フランクはその伝説的な写真集『アメリカ人』を1958年にフランス
で、翌年アメリカで出版してからほどなく、表現の主戦場を映画制作にシフトさせました。フラ
ンクが再び意識的に写真制作を手がけるのは、70年代に入ってからのことです。そのきっかけ
となったのが元村さんによる出版の提案であり、すなわち『私の手の詩』を作り上げていくプロ
セスそのものにありました。この書物には『アメリカ人』においてすでに狙われていた、アメリ
カ写真のフォーマリズム的な美学に対する解体の意思が見られます。しかし、映画から写真へと
フランクが再び還流してきたその時、取り澄ました「写真芸術」に対しては、もっと過激に、よ
り徹底したやり方で解体を推し進めています。そして個々の自発的なイメージの生成に向かって
フランクは、より主体的に介入していきました。自伝的であろうとすることはとりもなおさず、
形骸化したアメリカ写真の公的な伝統に対する、オルタナティヴな再挑戦の意味がありました。


  作品制作に係わる介入の方法には例えば、映像を連続的にあるいは時には非連続的につなぎ合わ
せること、すなわち映画的シークエンスの活用が挙げられるでしょう。この方法は明らかに、フラ
ンクが映画制作から学んだものが反映されていると考えられています。パーフォレーションの目立
つ「コマ」の連続を、そのままの形で活かしてプリントに反映させるなどの手法は、元村さんの編
集・刊行した『私の手の詩』において顕著に定着し始めたものでした。シークエンシャルな運動の
導出はしかし、必ずしも映画を2次元に転写して得られる、比喩的な時間表象にフランクが関心を
持っていることだけを意味しているのではありません。それだけでなく、写真のプロセスで不可避
に生じる触覚的なものへの強い関心をわれわれは読みとるべきなのです。さらに70年代以降のフラ
ンクは、複数の写真をつなぎ合わせることに強い関心を抱いていきます。そこには、1枚の「決定
的な瞬間」を写した写真に対する批判も込められています。

  70年代以降のフランクの写真のもう一つの特徴もまた、「世界と私」の触覚的なコレスポンデンス
に係わるものです。そのための大事な武器としてフランクには、簡明な「言葉」があります。すなわ
ち、画面の中にさまざまな様態で、文字を書き込み、表示することです。文字あるいは言葉に対する
鋭敏な感覚は、フランクにとって天性のものであり、かつ生涯を通じた志向を表しています。しかし
ながら、70年代初頭のフランクにとって、言葉を積極的に写真の中に導入しはじめたことは、特別
な意味を持っていました。


  60年代末から70年代の前半にかけては、フランクの人生の転機に当たっています。長く連れ添い
二人の子を設けた彫刻家のメアリー・フランクと別れ、新たな伴侶・ジューン・リーフと出会い、ノ
ヴァスコシアのマブーにも住処を得たのもこの頃のことです。映画制作に注力する日々の中で、ロー
リング・ストーンズの1972年の全米ツアーを綴った傑作映画『コックサッカーズ・ブルース』を一緒
に制作した、親友のダニー・シーモアが、1973年太平洋上で行方不明となりました。翌74年にはフラ
ンクの娘アンドレアが、ボーイフレンドと旅行中にグァテマラ上空で起こった飛行機事故のため、亡
くなります。まだ二十歳の若さでした。

  肉親と親友の死を通じてフランクは、写真を私的な追悼のよすがと見なすこと、すなわち、古くか
ら普通の人々が生活のおりふしでしてきたようなコミュニケーションの道具と捉えるようになりまし
た。こうした喪失の経験とそれに伴う写真の使用法の変化が、フランクにとっては写真への言葉の導
入の理由の一つと考えられています。プロフェッショナルな写真家として、「ヴァナキュラー写真」
の使用に徹底して賭けつづける存在は稀有だというべきでしょう。フランクにとり、写真は死者へ手
向けられる花束、捧げ物になりました。そして、当のイメージの内外には決まって簡明な言葉が添え
られています。

  フランクは「花の写真家」といってもいいでしょう。しかしフランクがいつも注目しているのは、
「花と人」であり、花と人をめぐるコミュニケーションのかたちなのです。花は誰かに手渡されるも
の、捧げられ、供えられるものであり、フランクの写真は花をめぐるそうした行為を見つめた結果な
のです。


  度重なる喪失を痛苦とともに抱え、かつどうにかやり過ごしつつ、自らの老いにも気づき始めるマ
ブーでの日々は、元々内向的なフランクにいっそう、省察の深化をもたらしました。太平洋に面した
寒村で、厳しい自然を前に、誰もが抱くけれども容易に形象化はし難い人生の問いの数々が、具体的
な文字の形で写真に書き込まれ、刻まれていきます。周囲の寂寞とした自然風景の他、フランクが特
に注視するのは、窓辺に置かれた小さなオブジェやわずかな花束、ちょっとした日用品や友だちから
贈られたプレゼントなど、日常の片々たる事物です。それらの余りに断片的な存在はしかし、フラン
クにとってのアルターエゴとして必要不可欠な対話の相手であるかもしれませんし、遠く離れた友人
へ贈る久しぶりの挨拶の結晶のごときものかもしれません。

  日常生活における手応え、「違和と親和」の一切は、取り替えのきかず、後戻りできない人生の一
回性の徴として、フランクの写真には情動の流露を伴って定着しています。日々の出来事を消し去れ
ない痕跡として長く保存すること。そのために必要な持続的な凝視、つまりフランク自身の言葉を借
りれば、「じっとして、そのままつづける」ことが、彼の写真の特質を成しているに違いありません。
そして、これからもまた。


 注

この小文を執筆に際しては、以下に示す2冊の書物に、そしてとりわけその中に収録されている、
フランク作品の自伝的性格を重視するフィリップ・ブルックマン論文に多くを負っています。
Anne Wilkes Tucker and Philip Brookman(eds.), Robert Frank:New York to Nova Scotia
(Houston: The Museum of Fine Arts, 1986). ワシントンナショナル・ギャラリー編・刊
『ロバート・フランク:ムーヴィング・アウト』展図録【日本語版】、1995年。



倉石 信乃(くらいし しの)
1963年生。明治大学教授。近現代美術史・写真史・美術館論。1988〜2007年、横浜美術館学芸員として
マン・レイ展、ロバート・フランク展、菅木志雄展、中平卓馬展、李禹煥展などを担当。1998年重森弘
淹写真評論賞、2011年日本写真協会賞学芸賞を受賞。主な著書に『スナップショット-写真の輝き』
(2010年)、『反写真論』(1999年)、『失楽園 風景表現の近代 1870-1945』(共著、2004年)など。
『沖縄写真家シリーズ[琉球烈像]』(全9巻、2010-12年)を仲里効と監修。



 
posted by gallery bauhaus | 12:43 | ロバート・フランク写真展 | - | - |
邑元舎関連商品販売中です
ロバート・フランク写真展「MEMORY ―ロバート・フランクと元村和彦―」会期中(〜4/18)のみ、
元村さんが設立した邑元舎の写真集、作品集を特別価格にて販売いたします。



Robert Frank写真集『私の手の詩』
1972年 邑元舎刊  限定1000部
デザイン―杉浦康平
新本 ¥300,000 →  ¥200,000 (税込)
古書 ¥150,000 →  ¥100,000 (税込)

 
 
Robert Frank写真集『花は…』
1987年 邑元舎刊  限定500部
デザイン―杉浦康平
新本 ¥400,000 →  ¥250,000 (税込)

 
 
Robert Frank作品集「THE AMERICANS, 81 Contact Sheets」
2009年 邑元舎刊  限定300部
デザイン―杉浦康平  解説―倉石信乃
桐箱入特装版(220部) ¥153,000 →  ¥130,000 (税込・送料含)
帙入普及版(80部)    ¥102,000 →  ¥92,000 (税込・送料含)

 
  
森永純写真集『河…累影』
1978年 邑元舎刊  限定500部
デザイン―杉浦康平
新本 ¥60,000  →  ¥45,000 (税込)
古書 ¥27,000  →  ¥20,000 (税込)



詳しくはこちら
http://www.gallery-bauhaus.com/book-110602_frank.html



 
posted by gallery bauhaus | 14:10 | ロバート・フランク写真展 | - | - |
ロバート・フランク写真展「MEMORY ―ロバート・フランクと元村和彦―」
2/20より、〈特別企画展〉ロバート・フランク写真展「MEMORY ―ロバート・フランクと元村和彦―」
開催中です。



関連イベントとして、二回のギャラリー・トークの開催が予定されています。

【第一回】森永純(写真家)×河野和典(元日本カメラ編集長)
聞き手に河野和典氏をお迎えし、元村和彦との出会いや、助手をして以来親交の続いていた
ユージン・スミスとのエピソード等、当時の貴重なお話を中心にトークを行います。
日  時 / 2015年3月14日(土) 19:00〜 (当日は18:00閉廊、18:30より受付開始)
参加費 / 2,000円(展示チケット代含む)

【第ニ回】倉石信乃(明治大学教授)
ロバート・フランク写真展「Moving Out」(横浜美術館 1995年)元担当学芸員でもある
倉石信乃氏にロバート・フランクについて語っていただきます。
日  時 / 2015年4月11日(土) 19:00〜 (当日は18:00閉廊、18:30より受付開始)
参加費 / 2,000円(展示チケット代含む)

ご予約はメールかお電話にてお待ちしております。
メールの際はご希望の回・お名前・ご住所・お電話番号を明記のうえ、送信して下さい。

詳細はこちら
http://www.gallery-bauhaus.com/150220_frank.html



 
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